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「注射で神経損傷」の訴訟に注意を

オピニオン 2014年2月19日 (水)  平岡敦(弁護士)

神経損傷事例の増加 採血や点滴などで注射を行う際に、神経を損傷し、RSDやカウザルギーを発症する事例が増えている。症状の内容や程度が患者の素因に影響される部分も多く、医療側と患者との関係がこじれてしまうケースも多い。中には、医療側が訴えられる事例もあり、裁判例も蓄積されつつある。裁判例の分析を通じて、どのような場合に医療側の責任が認められるのかを分析する。 責任が認められるための要件 医療側の責任が認められるための要件は、過失・因果関係・損害の存在である。 まず患者に損害が発生していることが大前提である。何らかの症状が発生し、それにより治療費の支出や休業に伴って生じた逸失利益など具体的な損害が生じていることが必要となる。 次に、過失の存在が必要となる。どのような場合に過失が認められるかについては、後述する。過失が認められたら、その過失と損害との間に因果関係が認められる必要がある。因果関係とは、「あれがなければこれがない」と言える関係が過失と損害の間に存在し、それが社会通念上、医療側に責任を負わせても仕方ないと思えるような関連性を有しているか否かで判断される。神経損傷に関する裁判例で、こ...