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エボラ“疑い”公表の愚かさ

オピニオン 2014年11月6日 (木)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

リベリアから帰国した人物が発熱したというので「エボラ疑い」という理由で入院。メディアがこれを報じた。 これは、感染症学的に、リスクコミュニケーション学的な失敗である。「疑い」の段階でメディアにリークすべきではなかったし、メディアもこれを報じるべきではなかった。 我々はHIV感染について検査するが、確定診断がつくまで決して患者に「あなたはHIV感染があるかもしれない」などとは言わない。確実な診断が出てから、お伝えする。HIV検査は二段構えになっているから、第一の検査の陽性、第二の検査の陽性を持って診断とする(例外はある)。しかし、第一の検査陽性は間違っていることもある。実際にHIV感染がなくても検査が陽性になることはあるのだ。 しかし多くの患者は「検査が間違えることもある」というコンセプトを知らない(実を言うと、医者でも知らない人は多い)。いくら形式的には「これは確定ではない」と説明しても、患者は大パニックである。取り乱してトラウマが何ヶ月、それ以上続くこともある。正しい情報を形式的に伝えていれば「メッセージが伝わる」というものではないのだ。 医者は人間の心理を熟知している(べきだ)。な...