「膀胱炎」四大処方の使い分け。
今回解説した4処方に対する、膀胱炎を訴える女性の分布を図II-18-1に示します。縦軸は膀胱炎を訴える女性の割合をとっています。虚実という病態を横軸にとると、虚には清心連子飲が、虚~虚実間には猪苓湯が、虚実間~実には五淋散が、実には竜胆瀉肝湯がそれぞれ適応となります。膀胱炎という炎症性の疾患ですから、適応となる漢方薬は陽の病態に用いる処方となります。また、この横軸の虚実はそのまま膀胱炎の炎症の強さを反映します。すなわち、実が一番炎症の強い病態であり、虚実間から虚に向かうにしたがって炎症が軽い病態ということになります。
先ほどの症例を考察してみましょう。寒がりで手足が冷えるという症状はありますが、膀胱炎を繰り返すという症候自体は陽の病態と判断します。虚実は脈候や腹候から虚実間~虚と考えられます。膀胱炎もそれほど強い炎症でなさそうであり、漢方薬は猪苓湯と清心蓮子飲の鑑別ということになります。気虚がベースにあり、神経質で胃部症状も認めていることから清心蓮子飲を選択し処方しました。同薬を服用後から夫との性交後にも膀胱炎になることはなくなりました。...
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