症例: 70歳代、男性
病歴: 食道がん終末期で在宅緩和ケアを受けており、在宅看取りを希望されていた。高度難聴のためか、コミュニケーションを嫌がる傾向にあった。緩和的放射線治療後の食道通過障害のために摂食量は少なく、るい痩が目立っていた。
心理社会的背景: 独居。婚姻歴なし。遠方に甥がいて手続きなどはしてくれている。中学校卒業後から最近まで、1 日も休むことなく肉体労働を続けてきた。趣味は将棋や釣り。
医師と看護師が定期的に訪問していた。狭い部屋は綺麗に整えられており、昭和感のある黒電話や手動の洗濯機などを丁寧に使われていた。訪問すると、眉間に皺を寄せながら胸を押さえていることが多かった。
患者 「(胸を押さえながら)痛い。」
医師 「食べた後ですか? 食べ物が詰まりますか?」
患者 「…わからない。急に痛くなる。」
医師 「何度か説明していますが、ステントを入れましょうか?」
患者 「…わからない。痛い。」
医師 「しばらく食べることを止めましょうか? 点滴しましょうか?」
患者 「…わからない。痛い。」
医師 「…」...
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