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医師が民事責任を負う因果関係の考え方

2024年9月2日  診断と治療社

因果関係について さて、ここで次の事例22の場合の因果関係を考えてみましょう。 事例2—2 剖検で、死亡原因は悪性リンパ腫であると診断され、高悪性度で進行が早く、一般に予後不良なタイプであることもわかりました。そのため、たとえ産婦人科初診時に上腹部腫瘤について精査し悪性リンパ腫と診断し標準的な治療を行っていたとしても、死亡に至った可能性が高いと考えられました。 事例22でも、上記の過失行為(見落とし)と損害結果(死亡)が生じていることは事例21と同じですが、過失行為と損害結果の間に因果関係は認められるでしょうか? この事例22の場合には、うっかりミスをせず初診時に精査をはじめていたとしても、進行が早くX2さんの命を救うことはできなかった可能性が高かったというのですから、「うっかりミスをしていなければ、X2さんが死亡することはなかった」という関係にありません。そのため、この場合「あれなければ、これなし」という因果関係は認められないことになります。たとえば、その過失行為の時点ですでに手遅れ、というような事例では、因果関係はないということです。 民事訴訟では、この~の3つの要件にかかる事実...