"正しさ"のその先へ――PCCMという視点
重症肺炎の高齢女性。
医学的な根拠をどれだけ説明しても、彼女は入院を頑なに拒み続けました。
そもそも、彼女は私と"同じもの"を見ているのだろうか?
その疑問に思い当たった時に「患者中心の医療の方法(PCCM)」というフレームワークを思い出しました。
PCCMは、医学的な診断や治療の視点だけでなく、患者さんがどのように病気を経験しているのか、その人の生活や価値観の中で医療がどう位置づけられているか、といった主観的な体験を踏まえて診療を組み立てる考え方です。
PCCMには、次の4つの柱があります。
病気の診断名だけでなく、「つらさ」「健康観」を含めた体験を探る
地域や家族を含めて、その人の生活全体を理解する
医師と患者が共通の理解を持ち、話し合いながら治療方針を決める
継続的な関係を通じて信頼を築く
「入院しましょう」と言っても拒否される。治療方針が決まらず困る。
このような不協和音は、医師と患者との間で、「何を問題とし、どう対応するか」という状況認識が共有できていないサインです。...
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