1. m3.comトップ
  2. 医療維新
  3. 島根大“事故調”、患者と医師の悲劇◆Vol.1

島根大“事故調”、患者と医師の悲劇◆Vol.1

スペシャル企画 2016年9月13日 (火)  橋本佳子(m3.com編集長)

今年4月28日、最高裁判所で、島根大学医学部附属病院を訴えた医療事故訴訟の上告が棄却、産婦人科医の過失を否定した広島高裁判決が確定した。2006年9月7日、同病院で起きた緊急帝王切開手術で、低酸素脳症に基づく後遺症を持つ子供が生まれ、妊婦も子宮摘出に至った事故をめぐる裁判は、事故から10年近い月日を経て、ようやく終結した。 本訴訟で、患者側が提訴の根拠としたのは、島根大病院が設置した「医療事故調査委員会」の報告書だった。折しも、2015年10月から医療事故調査制度が、国の制度としてスタートした。本制度の中心は、各医療機関における院内事故調査だ。この島根大“事故調”事件は、院内事故調査が適切に行われなければ、患者や現場の医師たちの混乱を招く典型例と言え、得られる教訓は多い。 では、報告書はどんな内容だったのか――。院内事故調査と裁判の関係に主に焦点を当て、島根大“事故調”事件を検証する(計5回の連載を予定)。 「報告書を作成し、病院長自らが記者会見を開いて、医師らの不適切な点を明らかにし、申立人らに謝罪し、7741万円を提示し、医療費も負担するとした。このような病院の対応は、本件事故につ...