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もう一つの“医療危機”、基礎目指す医師減少【平成の医療史30年◆大学編】

スペシャル企画 2019年3月30日 (土)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――研究環境悪化に加えて、基礎研究を志向する医学生、医師も減っているとお聞きしています。 東大医学部の場合、研究者の道に進む医師の割合は、近年では1986年がピークで、約100人の卒業生のうち約2割という状況。ところが、その後は減少し、私が医学部長に就任した2007年度前後には年に1、2人にとどまっていました。 清水孝雄氏は、政府には予算の拡充を求めると同時に、大学自身の努力も必要だと強調。 他の大学でも同様に、基礎研究者の減少に直面していました。研究医のポストが減るだけではなく、なり手自体が減っていたわけです。その原因の一つは、2004年度の臨床研修の必修化です。臨床に行けば給料がもらえる一方、大学院に進めば授業料を払わなくてはならず、その差は大きいでしょう。その後に続く学会による専門医制度も、2000年代に数多く作られました。専門医制度は、医療の質を高めるために、必要な面もありますが、多すぎます。一種の“不安産業”。「専門医を持っていないと、どこか不安」などと、多くの医師が考えるようになってしまった。 また以前は最初に臨床に従事し、臨床上の問題意識を持って、その後に基礎研究に入る医...