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日本での風邪診療の「カルチャーショック」

オピニオン 2019年12月15日 (日)  佐々江龍一郎(NTT東日本関東病院総合診療科医長兼国際室室長代理)

「風邪の患者さんはしっかりお薬を出すと満足してくれるよ」 日本での風邪の標準診療について、帰国したばかりの私に日本の医師である友人は親切に助言してくれたのだ。2017年のことだ。日本は医療がフリーアクセスということもあり、特に冬場の診療所や中小病院の外来診療は風邪で受診する患者が多い。一般的な風邪の患者の場合、抗生剤(クラリスロマイシンなど)や解熱剤(ロキソニン)、鎮咳薬(コデイン)、去痰薬(ムコダイン)やトラネキサム酸など多剤処方の「セット」で対応するのは合理的だ。 しかし、患者・医療者の両方の立場で英国で24年間過ごした私にとって、この「風邪に対する多剤処方」はカルチャーショックであった。英国では、風邪の患者に対する処方は解熱薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)が中心だ。積極的に鎮咳薬などを出すこともなく、例えば咳嗽に対して最近の英国のNICEガイドラインは、蜂蜜が咳に効く一定のエビデンスがあるとし、5~10mLの蜂蜜と紅茶を混ぜて服用することを推奨している。 これまで、多様な症状それぞれに対して薬剤を処方し、合わせて5~6種類の薬を約1週間分、計100錠以上の錠剤を処方すること...