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この子、死ぬんじゃないか?挿管チューブ手に救急車へ

オピニオン 2021年7月25日 (日)  松永正訓(松永クリニック小児科・小児外科 院長)

 前回は開業してみると、軽症の患者さんが多かった話をした。だがもちろん重症の子どもも来る。ぼくが診た患者が最も死に近づいたケースは、開業して2カ月ほどが経った梅雨の終わりだった。※前回の記事はこちら 窒息の恐れ、救急病院へ搬送  その日の夕方に受診した1歳の女の子は、発熱と鼻水、咳を主訴に受診した。これまでに風邪で2~3回診ている子だ。胸に聴診器を当ててみると、ゼーゼーと呼気性の喘鳴がある。ただ、吸気のときにもわずかにクークー音を立てていた。風邪をきっかけにした気管支喘息だろうと考え、ネブライザーを吸ってもらった。その音とネブライザーの霧が怖いのであろう、女の子は大泣きになった。  処置が終わって聴診をしてみるが、全然胸の音は改善されていない。何の効果もないというのは珍しい。  「お母さん、あと30分待合室で待っていてください。もう一度聴診して必要なら、再度吸入します」  その間、何人か診察をした。そして30分近く経ったところで女の子を診察室に入れた。さっきと様子が違う。涎を垂らし、顎を突き出している。呼吸するたびに鼻孔が開き、キューキューした音が聴診器を使わなくても...