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「個々の患者に合わせて」のスローガンも、検証を欠けば単なる念仏に

オピニオン 2022年1月9日 (日)  國頭英夫(日本赤十字社医療センター化学療法科)

前回の話のついでに、患者に対して根拠もなく低用量化学療法を行うクリニックが決してやろうとしない、殺細胞性抗癌剤を用いた低用量化学療法についての「臨床研究」をここでご紹介しておきます。こういうコンセプトは、やはり高齢者や合併症などで全身状態が不良である(”frail”の状態にある)患者が対象になります。ちなみに、PS不良の患者の進行癌に対してどういう治療戦略を採るか、という問題がよく取り上げられますが、多くの研究で「PS不良」を十把一絡げにしてしまっているのは不適切です。そのPS不良が、例えば高齢とか併発疾患によるものであれば癌の治療は手控えねばならないのに対し、癌の進行のためにPS不良になっているのであれば、ある程度リスクを冒してでも癌を叩きにかからないと改善は見込めません。これら正反対の戦略を用いるべき2つの集団を合わせて対象としても、うまくいかないのは明らかです。...