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仙台筋弛緩剤事件、一審判決の三つの誤り

オピニオン 2011年2月23日 (水)  池田正行(長崎大学医歯薬学総合研究科教授)

1.はじめに 私は被告の代理人の弁護士から依頼を受け、いわゆる「仙台・筋弛緩剤事件」の医学的検証を行いました(『“誤診”が生んだ司法事故、仙台筋弛緩剤事件』、ホームページ『司法事故を考える』を参照)。 被告は計5人の殺人・殺人未遂の罪に問われましたが、その中でカギになるのが当時11歳女児の診断です。逮捕・起訴の直接的なきっかけとなった上、診察した医師たちも診断が付けられなかったからです(他の4人については、診療録に診断名が記載されていますが、11歳女児も含め、「筋弛緩剤(ベクロニウム)中毒を疑った」との記載はありません)。裁判では、筋弛緩剤中毒により、容態が急変し、植物状態になったとされましたが、私は診療録や検察側・弁護側の証人の証言などを検討して、「筋弛緩剤中毒では説明できない。ミトコンドリア病主要病型の一つである、MELAS(Mitochondrial myopathy Encephalopathy, Lactic Acidosis, and Stroke-like episodes)で、症状経過と検査所見のすべてを合理的に説明できる」という結論に達しました。 昨年末から、私自身の...