都立病院の産婦人科医の立場から見た妊婦搬送問題(4)- 都立府中病院・桑江氏
オピニオン
2008年11月25日 (火)
桑江千鶴子(都立府中病院産婦人科部長)
2.医療、特に周産期医療にお金をかける およそ生物は、自分の種を残すことにその生の大部分の時間と労力を費やす。生まれてきて、子孫を残し、死んでいくのが通常の生物のありようだ。しかし現在の日本では、子供を産み、育てることに対する税金の使い方が極端に少ない。これでは少子化は止まらない。日本国民とそれぞれの民族の持つ文化を次世代に伝えていくこと、永遠に存在させていくことに政治も行政も熱心には見えない。なぜなのか。推測するに、日本の意思決定機関を支配する方たちは、このようなことは「女・子供のするべきこと」で「男」のすることではない、つまり価値観として重要だとは思っていないのではないかと思う。 周産期医療への支援の少なさ、子供を産み育てる女性への支援の少なさ、特に働きながら子供を育てる女性への支援の少なさは、先進諸国の中でも突出している。世界第2の経済大国であるにもかかわらず、国民の「生命と財産」を守ることが国の役割であるにもかかわらず、「生命の誕生」とその「育成」を重要と考えているとは感じられない。その結果、周産期医療は衰退して崩壊寸前であり、妊婦の命は危険にさらされている。ここに「お金」をか...
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