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移植術後、医師に送りつけられた仏像【平成の医療史30年◆循環器編】

2019年1月10日  平成の医療史30年

法案成立後初の心移植、最初に会ったのはドナーではなかった ――1999年2月28日、高知赤十字病院でドナーが現れ、脳死判定臓器移植法に基づく初の脳死心臓移植が行われた。しかし、高知赤十字病院に移動した福嶌氏が最初に行ったのは、ドナーのところではなかった。  実は同じ高知赤十字病院で、移植の少し前に心臓移植が必要な女性患者が現れて、僕のところに相談があった。そのときはすぐに伺えず、移植がかなうことなく、その女性は亡くなった。国内1例目の脳死心臓移植のドナーが現れたのは、その数週間後だった。これは初めてメディアに話したエピソードだと思う。  僕は、日本の心臓移植を始めたのは彼女じゃないかと思っている。だから、ドナーの心臓を摘出に行った時、まず彼女のカルテを見て「本当に、助けられなくてごめんね」と謝った。そのことがあって以来、心臓移植の相談があったら、可能な限り、その日に向かうことにしている。必ず直接会って、話をして、もちろん助けられないこともあるが、最大限できることをしようと。その女性が亡くなったICUで、臓器移植法成立後初のドナーが現れ、本当はその人を助けるために診察室に入るは...