「かつて、私たちは認知症を何も分からなくなる病気と考え、徘徊や大声を出すなどの症状だけに目を向け、認知症の人の訴えを理解しようとするどころか、多くの場合、認知症の人を疎んじたり、拘束したりするなど、不当な扱いをしてきた」――これは平成も後半に差しかかった2012年(平成24年)に厚生労働省認知症施策プロジェクトチームがまとめた報告書「今後の認知症施策の方向性について」の前段に掲げられた文章の一部だ。老年医学の専門家として長年、高齢者医療の問題に取り組んできた国立長寿医療研究センター理事長の鳥羽研...