QOVの概念が芽生え、定着【平成の医療史30年◆眼科疾患編】
Quality of Vision(QOV)――この概念の誕生と定着こそ、平成30年間の眼科診療分野の進歩を示していると言えるだろう。超音波水晶体乳化吸引術(PEA)や各種眼内レンズ(IOL)開発による白内障診療が象徴的だが、失明を防ぐことに懸命だった昭和の時代に、治療後に視覚の質=QOVが改善することは絵空事だった。この30年間に眼科疾患の診療はどのように変化したのか、新たに登場した検査機器や手術機械・技術、新規薬剤を通して見ていこう。(m3.com編集部)
象徴的な白内障手術の小切開創化
飛躍的な発展を遂げた領域としてはまず、白内障手術が挙げられるだろう。PEAの普及と歩調を合わせるように、1989年(平成元年)、折り畳んで使用できるIOL「フォールダブルレンズ」が薬事承認された。これにより白内障手術は小切開創化し、手術時間の短縮に寄与した。また、従来の大きく切る手術の難点だった術後の乱視リスクが低減した。2000年代に入ると、乱視を矯正するトーリックIOLや、二重焦点の多焦点IOLなど、多様なIOLが開発され、白内障手術はもはや単なる開眼手術でなく、QOVを追求できる...
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