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心移植の「暗黒時代」をiPSで乗り越える【平成の医療史30年◆再生医療編】

2019年4月9日  平成の医療史30年

 1998年(平成10年)のヒトES細胞(胚性幹細胞)株の樹立、2007年(平成19年)のヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)株の樹立によって、失われた臓器や機能を取り戻す「再生医療」は現実のものになろうとしている。ES細胞/iPS細胞を用いた移植はどのように進歩してきたのだろうか。多能性幹細胞を用いた心不全治療の可能性を長年研究してきた大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科教授で、日本再生医療学会の理事長も務める澤芳樹氏に、再生医療の見通しを語っていただいた。近い将来、人工心臓や心臓移植しか治療法がなかった心不全に対し、第三の治療法として、iPS細胞を用いた心筋シートの移植が実現するだろうと澤氏は語る。(聞き手・まとめ:m3.com編集部・宮内諭、全2回連載) 心臓移植の「暗黒時代」を組織工学で解決 ――澤先生はなぜ心臓外科医を目指したのでしょうか。  私が大阪大学医学部を卒業したのは1980年(昭和55年)のことでした。大学ではスキーとテニスに明け暮れ、蓼科高原でスキーのインストラクターとして生きていこうかな、と本気で考えたほどでしたが、6年生の夏に心機一転...