「王監督の手術と同じことができる病院」で患者が増えた【平成の医療史30年◆腹腔鏡下手術/da Vinci編】
表皮から腹腔に穴を開け、カメラと器具を挿入して手術を行う腹腔鏡下手術。医療界のみならず、患者の間にも広くあった「穴からの手術で本当に安全にできるのか?」という疑念を払拭したのは、あの世界的ヒーローだった。藤田医科大学総合消化器外科教授の宇山一朗氏のインタビューを続ける。(聞き手・まとめ:m3.com編集部・軸丸靖子/2018年12月17日取材、全3回)
自分が患者さんの体の中に入って見ている感覚
――1990年代の消化器外科手術といえば、小切開か、それとも大切開かが、大きなトピックだったと思います。
小さく切開して小さく開け、直視下で吻合する小切開術ですね。切開創が小さい利点は確かにあるのですが、切開創が小さいため、「肝臓が腫れた患者さんでは術野がよく見えない」といったことが起こっていました。小切開の定義も決まっておらず、「安全にできる範囲で一番小さいのが小切開」というだけ。身長180cmの人と150cmの人とでは同じ小切開でも切開創の大きさが違っていたのです。
その点、腹腔鏡ならばどんな体形の人でも同じ傷の大きさ(器具が入る大きさ)で手術が行えま...
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