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MRSA腸炎はなぜ日本の外科病棟で流行し、消えたのか

2021年8月16日  金原出版

岩田健太郎著『HEATAPP!たった5日で臨床の質問力が飛躍的に向上する、すごいレクチャー』(金原出版)より転載 岩田 さて、「MRSA腸炎」って聞いたことありませんか? MRSAとは、先ほど言ったようにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌でした。 1980~1990年代にかけて、日本の外科病棟で奇妙な腸炎が流行りました。術後数日から1週間くらいすると、患者さんが発熱して緑色っぽい水様便を流してお腹が痛いという腸炎が続出したんです。そして便を検査して培養を出すと、その便からMRSAが検出されました。 これは日本中で起きました。そしてあちこちでそれが報告されました。日本の学会や専門家はこれをMRSA腸炎と呼んで対策を立てた。MRSAを殺す特効薬はバンコマイシンという抗菌薬です。ですから、患者さんにバンコマイシンを飲んでもらいました。すると、この下痢は止まって腸炎も治った。 ……そうか、MRSAが腸炎を起こして、バンコマイシンを飲んでMRSAを殺すと腸炎が治った。よかったよかった……と思ってはいけません。 1980年代~90年代にかけてこのMRSA腸炎は日本中で流行しましたが、実は他の国で同じよう...