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米国におけるペインマネジメントの現状

オピニオン 2009年10月22日 (木)  中田はる佳(東京大学医科学研究所東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 研究員・法務博士)

1.はじめに 「ペインクリニック」はペイン、すなわち痛みの治療に特化した専門診療科であり、神経ブロック療法や薬物療法などの方法を用いて、有害な痛みを緩和するための治療を行う。わが国では従来「麻酔科」でこれらの治療が行われていたが、2007年8月に日本ペインクリニック学会が認定する「ペインクリニック専門医」が標榜科目として認められるようになった。近年、ペインクリニックが注目されているが、痛みに対する専門診療の重要性が認識され始めたのはごく最近のことなのである。一方、米国では状況が異なっているようである。 2.痛みは「疾患」―医療機関、患者、メーカーの共通認識 米国では、痛みは多くの人が悩まされる「疾患」である。7000万人もの人々が慢性疼痛の影響を受けているとされ、背部痛だけでも年間1300万人の患者が受診している。特に腰痛により労働損失を生じることが多いという。米国の成人人口のうち14%もの人々が深刻な慢性腰痛を患っており 1)、投薬、診察および生産性の低下によるコストは年間1000億ドルにも及ぶ。これらの数字を見ただけでも、痛みがいかに人々の生活に影響を与えているかがわかるだろう。そ...