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「再びボールは医療界に投げ返された」、川崎協同病院事件の最高裁決定

オピニオン 2009年12月25日 (金)  大磯義一郎(医師・弁護士)

1.経緯 本件は今から11年前(1998年)に起きた事案である。気管支喘息の重積発作により心肺停止状態で搬送された患者に対し、蘇生は成功したものの、入院より2週間が経過しても意識が回復しなかったことから、担当医が家族の要請を受け抜管した。ところが、患者に苦悶様の症状が強かったことからセルシン、ドルミカムを点滴静注、なおも改善しないため、同僚医師の助言によりミオブロックを点滴静注した。事案から4年後、病院内の内部紛争を契機ににわかに騒ぎが発生し、医師の退職を経て、2002年4月に病院が記者会見を行い世間に知られることとなった。 当時の世間の風潮から、検察も動かざるを得なかった。医療行為が刑事事件となる場合、多くは業務上過失致死傷罪を問われることとなるが、本件では、担当医は殺人罪として起訴され、2005年に横浜地裁判決(懲役3年執行猶予5年)、2007に東京高裁判決(懲役1年6月執行猶予3年)を経て、本年12月7日最高裁判所(第三小法廷)による上告棄却(高裁判決の維持)の決定により、本件の刑事司法における決着を迎えることとなった。 しかし、一人の医師が刑事裁判にかけられ、11年もの年月が経...