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「殺人罪」の医師への行政処分に注目 -矢澤昇治・弁護士に聞く◆Vol.2

レポート 2010年5月20日 (木)  聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)

「今回の事件では、警察による捜査段階で行われた鑑定にも疑問を持っている」と指摘する矢澤昇治氏。 ――最高裁の法的判断について、お伺いします。 韓国では最高裁が2009年5月、延命治療の中止を求めた患者家族の訴えに対し、尊厳死の適法要件を列挙し、尊厳死を求める判決を出しています。私はこうした状況を踏まえて、日本でも最高裁が「治療中止行為」の適法要件を示すことを期待していました。その上で、「今回の事件では、治療中止の要件に当たらないために、殺人罪に当たる」とするなら、まだ理解できます。しかし、最高裁はこうした判断を全くしていません。 控訴審判決では、「医師の治療義務の限界」と「患者の自己決定権」という二つの視点から、治療中止行為の違法性を判断しています。最高裁判決でも同様です。 まず「医師の治療義務の限界」ですが、最高裁判決では、「本件抜管時まで、同人の余命等を判断するために必要とされる脳波等の検査は実施されていない」としている。では、脳波等の検査をすれば、人間の余命を判断できるのでしょうか。 私はカルテをはじめ、様々な資料を読みました。患者さんには脳幹に障害があり、肺も半分は機能を失って...