1. m3.comトップ
  2. 医療維新
  3. 「院内感染で捜査」、医療は再び崩壊の懸念

「院内感染で捜査」、医療は再び崩壊の懸念

オピニオン 2010年9月9日 (木)  大磯 義一郎(医師・弁護士)

1.業務上過失致死傷罪で捜査 9月3日、帝京大学医学部附属病院は、多剤耐性アシネトバクター・バウマニに同病院の入院患者46人が感染し、感染との因果関係が否定できない死亡患者が9人いると発表した。そして、そのわずか3日後の報道によると、「警視庁捜査1課が業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師ら病院関係者らに対し任意の事情聴取を始めたことが6日、捜査関係者への取材で分かった」(産経ニュース2010年9月6日)とのことである。 福島県立大野病院事件においては(当時の社会的情勢ですら)、2005年3月の県立大野病院医療事故調査委員会の報告書の公表から約1カ月後に捜査が開始された。本件の記者会見後わずか3日後に捜査が始まるという異例なスピードには驚きを隠し得ない。 本件は、本質的には、感染症という我が国における4番目の死亡原因により患者が死亡したということであり、およそ刑事司法の介入が必要な事案とは思えない。ここ10年の過剰な司法介入により、医療崩壊が生じたことを忘れてはならない。世界一とされている我が国の医療提供体制を破壊することは、国民にとって最大の損失である。今一度、冷静に考える必要がある...