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時間外労働時間の存在を認めつつ、「特定」避ける

オピニオン 2010年10月5日 (火)  江原朗(小児科医)

8月26日奈良地裁は、奈良県立三室病院に勤務していた臨床研修医が死亡した事件について、被告である地方公務員災害補償基金の遺族補償一時金などに関する支給決定を取り消す判決を下した(9月8日に同基金は控訴)。 地方公務員災害補償法によれば、これらの補償は平均給与額(日額)に基づいて額が決定される。県立三室病院には、ポケットベルを出勤時に受け取り、退勤時には返す体制があり、出退勤時刻の特定は可能であったはずである。にもかかわらず、時間外労働時間がなかったとした補償基金の支給決定は否定されたことになる。 研修医は自宅療養中に心室細動を来たし、翌日死亡 事件は以下のように発生した。この研修医は2003年4月から県立三室病院に勤務していた。2004年9月11日の産経新聞によれば、2003年10月から12月の時間外労働時間は月114時間に及んだそうである。2004年1月8日、この研修医はインフルエンザを発症、自宅療養中に心室細動(本件災害)を来して、翌9日に死亡した。 死亡が公務に由来した(民間の労働災害に相当)として、地方公務員災害補償基金から補償を支給する決定がなされ、両親に遺族補償一時金各約4...