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患者1人は「ミトコンドリア病」以外にあり得ず - 長崎大学医歯薬学総合研究科教授・池田正行氏に聞く◆Vol.2

インタビュー 2011年1月18日 (火)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

「医学的には、『患者Aさんの病気は、MELAS』と言えれば十分だが、刑事裁判ではまず筋弛緩剤中毒を否定することが重要になる。こうしたロジックは、臨床医にはない」と池田正行氏。 ――患者Aさんの症状は、筋弛緩剤中毒では説明できないとのことです(表1、2。インタビューのVol.1を参照)。 「複視と瞬き」ですが、「物が二重に見える」ことだけを取り出せば、筋弛緩剤によると見えるかもしれない。しかし、同時に「瞬き」、つまり瞼を動かそうとしており、これは筋弛緩剤では説明できない。 「構音障害と首の動き」も同様。確かに、筋弛緩剤により、神経筋接合部がブロックされて、「ろれつ」が回らなくなることもあります。しかし、構音障害が生じる原因は他にいくらでもある。これらを鑑別しなければいけない。患者Aさんは、構音障害と同時に首が動いている。これは筋弛緩剤では説明できない。 さらに、痙攣している。この点が特に重要。筋弛緩剤投与では、痙攣するはずはありません。臭化ベクロニウムの効果は、通常の麻酔でも5分前後、遅くても10分以内に全身の筋肉に及びます。仮に殺人目的で投与すれば、もっとその時間は早く、全身に筋弛緩が...