データの積み重ねによって進歩したイレッサ治療
オピニオン
2011年2月2日 (水)
村重直子(医師)
イレッサ国家賠償訴訟について、1月7日、東京、大阪両地方裁判所が和解勧告を出し、1月28日に国はこれを拒否しました。裁判のことは当事者ではなく分かりませんが、薬の承認に関する専門家であるはずの独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)としての見解が伝わってこないため、一国民として大きな不安を感じます。PMDAは法務部や広報部を設置するなどして、裁判や国会対応、メディア対応などを担える人材を用意し、国民への説明責任を果たすべきでしょう。 本稿では、医師として論文や審査報告書などから事実関係を追ってみました。皆さんが今回の件について考える上での一つの材料になれば幸いです。 1.承認時(2002年)の状況 イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)は、2002年1月25日に申請され、同年7月5日に、「手術不能又は再発非小細胞肺癌」に承認されました。承認時点での状況や、審査を行った医薬品医療機器審査センター(2004年4月以降、PMDA)の判断は、「審査報告書」としてPMDAのホームページに掲載されています(1)。 審査報告書に記載がある通り、非小細胞肺癌は、診断時に既に手術できないほど進行している...
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