「社会保障改革案」には問題点多々あり

去る6月2日に開催された政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」において、「社会保障改革案」が取りまとめられた。今後、この改革案をベースにしながら政府・与党で議論が続けられ、今月内にも政府案を正式決定すると言われている。折からの政局の混乱により改革案の行方には不透明感が漂っているけれども、この機会に現在議論されている改革案の問題点について検討することとしたい。今回の改革案にはいろいろ評価に値する点が含まれているのは否定しないが、ここでは今後の議論につながるよう問題点を中心に指摘することにしたい。 第一の問題は、今回の改革案における医療・介護提供体制の改革シナリオは、自公政権時代の2008年に示された社会保障国民会議のシミュレーションにおける「B3シナリオ」をベースにして、それに少しバリエーションを加えた内容となっているが、改革シナリオで示されている病床数やマンパワー等の数値がいかなる根拠に基づくものなのか、換言すれば、実際にこの改革シナリオをどのようにして実現しようとしているのかということが必ずしも明確ではない点である。 こうした長期推計の方法は、医療・介護提供体制と負担の見通しをセ...