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報道による担当医の人権侵害、杏林大“割りばし”事件◆Vol.5

スペシャル企画 2011年8月2日 (火)  橋本佳子(m3.com編集長)

「一番心に残っているのは、報道による担当医の人権侵害。本件は、医療事故ではなく、割りばしで不幸な結果が生じたものだが、無罪判決後も担当医を責めるような、報道が見られた。この人権侵害はいまだに回復していない」 元杏林大学耳鼻咽喉科教授の長谷川誠医師は、「善意に基づく医療の刑事責任は追及すべきではない」と主張する。 杏林大学“割りばし事件”で業務上過失致死罪に問われた担当医の上司に当たる、元杏林大学耳鼻咽喉科教授の長谷川誠医師は、7月24日の日医総研シンポジウム、「更なる医療の信頼に向けて―無罪事件から学ぶ」で、メディアのあり方を痛烈に批判した(『マスコミの報道に当初から怒り覚える』を参照)。同時に、「医師が、法廷やメディアで証言したり、発言を求められた場合には、医師としての良心に基づいて行うべき」と述べ、医師に求められるのは「医師の自律」であることを強調した。 被告の弁護人を担当した、小林充弁護士も、「本件は非常に難しい事件だった。専門家の意見もかなり分かれていた。事件がここまで難しくなった発端は、割りばしが、口腔内に突き出ていたという、解剖医の意見。しかし、このことを断定する医師はこの...