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「顔を見て話す医療者ゼロ」の悲しい現実

オピニオン 2013年9月10日 (火)  長尾和宏(長尾クリニック院長)

認知症専門病院に3年間入院していた認知症の人が自宅に帰ってきた。入院してすぐに胃ろうが造設され、寝たきりになって手足は拘縮している。息子さんは、始まったばかりの在宅の医療・介護スタッフをすべて入れ変えたいと言った。 退院して1週間もたたないうちに、当院に在宅依頼が来た。前医からの紹介状には、すべて入れ替えたいと言っている、と書いてある。 もしかして、モンスターファミリー?? イヤな予感がするも、紹介状を頂いたので、恐る恐る、そのお家に伺った。 可愛い顔をした寝たきりの老人が横たわっていた。あー、ウーは言えるが、会話はできない。 息子さんに伺った。 「どうして、医療介護スタッフ、ケアマネを総入れ替えしようと思ったの?」 「本当のこと言っても、いいですか?」 「いいよ」 「来るスタッフ、来るスタッフ、全員、親の顔を一度も見ないのです。ヘルパー事業所は、親の顔を一度も見ないまま書類にハンコを押せと言った。医者も入ってくるなり、親の背後にある椅子に座り、いろいろ質問しながら、パソコンに入力するだけっで、一度も親の顔を見なかった。帰り際に後ろから、じゃあ帰るね、と言っただけ。デイサービスも契約時...