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保存治療から手術治療への判断はいつ

オピニオン 2013年9月24日 (火)  佐藤秀次(金沢脳神経外科病院院長)

20年来の腰部脊柱管狭窄症の80代男性患者が受診された。3週間前から立てない、座れない、横になってしか食事ができない。左足は背屈不能の状態。両側のふともも後面からふくらはぎにかけて痛みとしびれが強い。排尿困難もあり。 MRIでは、4番と5番(L4/5)に驚くばかりの脊柱管狭窄を認めた。驚くばかりとは脊柱管内が真っ黒で脳脊髄液という液体も、脊柱管内の脂肪組織も何も見えず、ただ真っ黒なのである。馬尾神経の高度の圧迫を示す所見である。高齢者の狭窄症は、その程度が半端でない場合が多い。 長い間、不自由な生活を味わい、長生きした末の寝たきり状態である。この患者さんも一応、保存治療という名の治療を受けてきたのである。 なぜに、ここまで放置されたのか。いや、放置ではなく、ここに至るまで無効な治療が続けられてきたのか? この患者さんでもMD法による神経除圧術を行ったが、手術所見も半端でない。硬く厚くなった脊柱管内の黄色靭帯が薄い硬膜(馬尾神経を覆っている薄い膜で、高齢者ではさらに薄くなっていることがある)と強く癒着しており、摘出が困難であった。黄色靭帯と硬膜との癒着を剥がすと、膜が破れて馬尾神経が脱出...