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便宜的な制度利用が思わぬ人権侵害にも

オピニオン 2013年9月27日 (金)  平岡敦(弁護士)

■無罪判決後も続く身柄拘束 東京の大学院に通学していた中国人留学生が殺人未遂で起訴された事件(裁判員裁判)で、同僚弁護士が弁護人を務め、心神喪失1を理由に無罪判決を勝ち取った。検察側の鑑定医が、統合失調症の判断を下し、犯行当時、心神喪失の状態であったと結論づけたことが決定的な理由であった。 しかし、この中国人留学生は、一審で無罪判決となっても、釈放されず、無罪判決から2か月以上経った現在も、未だに身柄は拘束されたままである。一審の無罪判決当日、直ちに精神保健福祉法にもとづく措置入院の決定を受け、その後、医療観察法に基づく鑑定入院命令が出たからである。 ちなみに、この殺人未遂事件は1年以上前に起きており、中国人留学生は、逮捕・勾留開始当時から治療を受け始めたので、検察側の鑑定医も、無罪判決の時点では統合失調症の症状自体が既にコントロールされていることは認めていた。 ■医療観察法とは? 医療観察法(正式名称:心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)は、重大な犯罪行為(殺人、傷害、放火、強姦、強盗など)を行った者で、(1)心神喪失や心神耗弱を理由に不起訴となっ...