専門家泣かせの脳動脈狭窄症
オピニオン
2013年9月30日 (月)
吉村紳一(兵庫医科大学脳神経外科主任教授)
最近、脳動脈狭窄症で遠方から受診される方が増えています。これは、この病気には良い治療法が確立されていないためです。その経緯を説明いたします。 脳の血管が細くなっている場合、他の血管と同じように風船やステント(金属メッシュ)で狭いところを広げる血管内治療が可能です。しかし、脳の血管は細くて壁が薄いために傷つきやすく、治療でかえってトラブルが起きることもあります。このため、内科的治療と血管内治療のどちらが良いのか確認するための比較試験が行われました。この試験の名前をSAMMPRIS studyといいます。 脳梗塞などの発作を来し、高度な狭窄(70%以上)を認める患者さんが対象となりました。そして治療の内容によって以下の2群にランダムに振り分けられました。 1)積極的内科治療群 2)積極的内科治療+血管内治療群 その結果、なんと1)積極的内科治療の群の方が治療結果が良かったのです。血管が狭いために脳梗塞が起きるのだから広げれば良い、という単純な発想だけでは良くないということです。 しかし「積極的内科治療」というのは聞き慣れない言葉です。これは普通の内服治療とは違い、血液をさらさらにする薬を2...
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