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「数字依存」で感性と判断力は落ちる

オピニオン 2013年10月10日 (木)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

ある雑誌に「食の安全」をテーマに取材を受けた。が、煮え切らないコメントだったのでどこまで採択されるか分からない。というわけでここにまとめておく。こないだ、栄養士さんたちにお話ししたのも、同様の内容。 あるタイプの食事の善し悪しを吟味するのは難しくない。大切なのは、「だれ」に対して「どのような」食事をとると、「どのような」結果が得られるのかを吟味すればよい。pubmedでも調べられるが、ぼくは簡単なdynamedを使うことが多い。 例えば、mediterranean diet(果物、野菜、シリアル、豆、ナッツなどが多いオリーブオイルを使った食事)は、「心筋梗塞患者」の「全死亡率(フォロー平均27ヶ月)」を下げてくれる。Number needed to treat, NNT26。 が、 このようなクリアカットなエビデンスは、食事についてはむしろまれなことである。もっと煮え切らないデータのことが、ずっと多い。 それに、このエビデンスはもちろん一般化はできない。心筋梗塞患者と、そうでない人はいっしょにはできない。CD4の低いエイズ患者には生野菜は勧めないが、生野菜を禁じるものではない。ぼくは非...