ICUにも長期的視点の治療を
オピニオン
2013年11月7日 (木)
岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)
ARDSだけに特化したマニアック本。 昔だったらこの手の本はなんとか治療薬マンセー、で裏に薬の商品名がプリントしてあり、プロパーさんがただで配りまくる、、、的な本が多かったが、本書はそういう類いのものとは全然違う。非常にクールな本だ。日本でもようやくこういったクールな文体の書物が出てきたことをとても喜ばしく思う。最近、呼吸器、集中治療系では良書、よい雑誌が多いが、いかなる趨勢であろうか。日本にはICUでARDSをみる機会のある非専門家(内科、外科を問わず)がとても多いので、そういう素人(含む自分)には必携だ。 作りは非常にオーソドックスだ。歴史的経緯、疫学に始まり、病理所見、そして比較的新しいベルリンの診断基準と続いていく。しかし、間に間質性肺炎との見分け方など、臨床的なtipsはおおい。PaO2が改善したとき、FiO2とPEEPのどちらを下げるのがよいか、といったコントラバーシーも取り上げており、視点はきわめて臨床的だ。 また、バイオマーカーの学問的な知見と、臨床的な有用性のギャップをきちんと記載するなど(CRPは高い方が予後がむしろよい、、、)、クールな視点は本書を貫いている。その...
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