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大切なことは、基本に忠実なこと

オピニオン 2013年12月3日 (火)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

先日、ティアニー先生(LT)とお話していたら、本書(※編集部注『ティアニー先生の心臓の診察』)は自分が書いた中で一番よい本だと思う、とおっしゃっていた。LTはCurrentやThe Patient Historyなど何十という本を執筆している。では、なぜ本書なの?と尋ねると、「他の本には類書があるが、本書には類書がないから」だそうだ。なるほど、と思う。 いろいろな出版社のいろいろな編集者が「本を出してくれ」「雑誌の特集を監修してくれ」と依頼してくるが、お断りすることは、わりと多い。その最大の理由は「どこかで誰かがすでにやっていること」だからだ。すでに誰かがやっていることを繰り返すのは、時間の無駄である。特に雑誌の特集は読まれる寿命が短いので、労力と効果のバランスはとても悪い。「誰もやっていない企画」こそが、やりたい企画である。 ティアニーのレクチャーは日本だけでなく、世界的にも高い評価を受けている。驚くのは、天才的なダイアグノスティシャンの彼が、基本に実に忠実なことだ。病歴聴取も、身体診察も、鑑別のあげ方も愚直といえるくらい丁寧で、徹底している。経験値の少ない研修医ほど、そういうプロセ...