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後見人は家族より他人の時代へ

オピニオン 2013年12月12日 (木)  片桐由喜(樽商科大学商学部教授)

1 成年後見制度の登場 若夫婦と6歳の子供がマンションのモデルルームを見学に行った。広くて新しい部屋を見て、子供が販売員に「このおうちを買う」と言って、売買契約書に覚えたばかりのひらがなで名前を書いたら、マンション売買契約は成立するだろうか。もちろん、否、である。 契約をするには、契約締結能力、すなわち意思能力(物事を理解・判断する能力)が必要である。6歳の子供にその能力は認められない。 2000年に介護保険制度が始まった。これを機に、高齢者がグループホームに入所するにも、訪問介護を利用するにも、契約が必要となった。では、これらのサービスを必要とする重度認知症高齢者や、寝たきりの高齢者に契約締結能力はあるだろうか。これも、否である。 契約しないと施設に入所できないのに、入所が必要な当事者にその能力がない、というこのギャップを埋めるために、同年、成年後見法が登場した。これはすでに明治以来、民法に定められていた旧後見制度を介護保険制度にも使い勝手の良いように改正したものである。 旧制度が想定した被後見人は「資産と家族」、いわゆる家産のある者である。判断能力が減退した者が、家の財産を放蕩の果...