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医療事故・医療安全に関する文書と裁判上の提出義務◆Vol.2

オピニオン 2014年1月30日 (木)  山崎祥光(弁護士・井上法律事務所)

第4 分析 1.裁判例は何を保護対象にしているか (1)裁判例が保護対象としたもの 前記の裁判例が医療機関の利益として保護対象とするものは、主に「忌たんのない意見の交換」などによる「組織としての自由な意思形成」で、これにより「公正・円滑な交渉ないし訴訟追行」を行うことを保護しています。 (2)医療安全に関しての要保護性の考慮 医療安全目的で収集された情報については、責任追及の資料としないよう、制度的な保障が必要であることは医療の中ではコンセンサスが得られているところです(WHOドラフトガイドライン、米国におけるPatient Safety and Quality Improvement Act of 2005 等)。 しかし、前記の裁判例のうち、このような保護の必要性について言及したのは裁判例⑥のみであり、しかも上級審の裁判例⑤においてはこのような理由付けは削除されたようです。残念ながら上記の要保護性は社会的な常識となるには至っていません。裁判所にこの要保護性を認定させるには、証拠をもって示す必要があり、法律上このような要保護性が定められればベストですが、院内規定などでも医療安全情報の...