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患者への花は断るべきでない

オピニオン 2014年8月22日 (金)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

病院では患者への見舞いの花が持参されることは多い。しかし、それが感染管理上の理由で禁止されることが国内でも国外でもある。日本では2005年2月25日の朝日新聞の記事「病室花はどこいった」以来、禁止の態度を取る医療機関が増えていると聞く。 これをぼくは短見だと思う。医療機関は患者に送られる花を断るべきではない。以下、その根拠を述べる。 生花やドライフラワー、鉢植えに病原性のある微生物がいるのは事実である。水には緑膿菌やセラチアなどが繁殖しやすいし、土壌にはレジオネラなど土壌に常在する微生物がいることがある。 しかしながら、「そこに微生物がいる」というのと「それが感染症を起こす」というのは同義ではない。感染症は感染経路が成立していないと発症しないからだ。微生物は感染症の原因であるが感染症「そのもの」ではない。微生物学は感染症学の基盤であるが、感染症学そのものではない。両者を混同しているのが日本の最大の問題点だ。 花瓶の中に緑膿菌がいても、それが肺に入らないかぎりは肺炎の原因にはならない。血液に入らなければ血流感染の原因にはならず、尿に入らなければ尿路感染の原因にはならない。緑膿菌は花瓶から...