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医療事故の原因究明できない日本

オピニオン 2015年5月4日 (月)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

明日で福知山線脱線事故から10年になる。犠牲者の皆様に心から冥福をお祈りする。 JR西日本は事故を受けて体質改善に取り組み、責任追及型から原因究明型に認識を改める、と表明した。しかし、JR西労組が行ったアンケートによると、ヒューマンエラーへの対応について、3割強が未だに「責任追及と感じる」と答えたという。要するに、言っていることとやっていることが違うのである。 責任追及型にすれば、「悪いやつを懲らしめる」カタルシスは得られるが、問題そのものが隠蔽されて「なかったこと」にされたり(とくにヒヤリハット)、表面的な当事者だけが糾弾される蜥蜴の尻尾切りになる。けれども、一番大切な原因究明は曖昧なままで、同じパターンのエラーが構造的に繰り返されるようになる。 だから、「罪を憎んで人を憎まず」で徹底的に原因究明=「何が起きたのか、なぜ起きたのか」だけに焦点を絞り「だれが悪かったのか」という観念を捨象する必要がある。けれども、「水戸黄門」に代表されるように我々は「悪い奴らを懲らしめる」的なエートスを刷り込まれている。だから、かなり意図的に、意識的にこうしたエートスを捨象しないと、ついつい「責任追及型...