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薬を相対的に語らないMR

オピニオン 2015年5月5日 (火)  岩田健太郎(神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授)

外科系、内科系問わず、医療において薬はなくてはならないものです。そのことは、現代医学における「薬」がなかった時代を思い出していただければ、すぐに理解できます。 現代医学における「薬」とは、抗生物質とビタミン剤がその嚆矢であるとぼくは思います。両者は20世紀に誕生しました。秦佐八郎とパウル・エールリッヒが梅毒治療薬サルバルサンを開発し、アレクサンダー・フレミングがペニシリンを発見し、鈴木梅太郎が(脚気治療薬の)ビタミンB1を発見する時代です。要するに、薬理学の黎明期です。Goodman & Gilmanの第1版が出版されたのが1941年です。この時代こそが「薬」時代の幕開けなのです。それ以前は敗血症や脚気や壊血病などでたくさんの人が死んでいたのです。「薬」以前と以後においては、人間の健康のあり方は激変しました。 もちろん、それ以前にも薬はありました。現代の漢方薬のほとんどはそれ以前に開発されたものですし。しかし、こうした薬は患者の病気という「現象そのもの」をターゲットにした薬でした。漢方ではこれを「証」と呼んだのでした。もちろん、漢方医学にも病態生理的な理論はありますが、現代ではこれをサ...