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患者救済の「期待権」、原則認めず - 田邉昇弁護士に聞く◆Vol.2

インタビュー 2015年5月8日 (金)  聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)

――最近の裁判のトレンドについて、お教えください。「期待権」などは、一時は拡大の方向にありました。 民事裁判では、過失や義務違反があった場合に、死亡などの「悪い結果」との因果関係の有無が検討されます。「高度な蓋然性がなければ、因果関係はない」と判断するのが基本。この「高度な蓋然性」の立証を緩めたのが、東大ルンバール事件の1975年10月25日の最高裁判決。「高度な蓋然性の立証ができないと、いかにミスがあっても、何の賠償も得られない。ゼロ回答。だから、その立証を緩めてあげましょう」というのが、この判決の趣旨です。 それから時代を経て、出てきたのが「相当程度の可能性」という概念。2003年11月11日の最高裁判決は、脳炎の判断の遅れにより、麻痺が残ったことが問題にされ、因果関係はなくても、早く診断していれば、「相当程度、麻痺が回復した可能性がある」として、一定の慰謝料の支払いを認めました。ただし、この場合の賠償額は、「高度な蓋然性」が認められる場合よりも、ワンオーダー下がり、300万円くらいが相場と言われています。 もう一つの流れとして、因果関係を判断する際のエンドポイントの変化があります...