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コミュニケーションスキルと脳科学

オピニオン 2015年12月2日 (水)  枝川義邦(早稲田大学研究戦略センター教授)

マルチタスクは思い込み!? 薬局業務は、マルチタスクを求められるものです。 日々の調剤業務だけでなく、調剤監査や患者さんへの服薬指導など、一人でいくつもの業務をこなさないとなりません。もちろん、スタッフや患者さんとのコミュニケーションにも気を配りながら、となると、複数の業務を同時並行して進めるマルチタスクでの業務遂行が自然なスタイルになっていくものです。そうでもしないと目の前に山積するタスクをこなせない、というのが実情でしょうか。 しかし、人間の脳は真のマルチタスクには対応できません。一見、マルチタスクをこなしているように思えても、実はシングルタスクを素早く切り替えているに過ぎないのです。タスクAを途中まで進めて、タスクBに切り替える。タスクBも途中で一時停止して、またタスクAに戻って取りかかる――この繰り返しを、私たちはマルチタスクだと思い込んでいるのです。つまり、同時並行して時間短縮したつもりになったとしても、実はさほど短縮になっていないということです。 そればかりか、マルチタスクの状態は、短時間でのタスクの切り替えを繰り返すことから、長く続けると「集中力や注意力に難あり」の状態に...