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患者の死と向き合う――在宅が教えてくれたもの

オピニオン 2016年1月12日 (火)  藤澤節子(薬局ルンルンファーマシー代表取締役)

東京・武蔵野市で20年間に渡り在宅医療に携わってきた「薬局ルンルンファーマシー」の藤澤節子先生。この連載では、在宅を通じで出会った患者さんとのエピソードをお話していただきます。今回は、特攻隊として戦争を経験された患者さんとの出会いをご紹介します。 生き残ったことでの使命とは Fさんは、3年前にアルツハイマー型認知症だった奥様を亡くされ、ご本人は7年前に、ゴルフ場で重篤な心筋梗塞を起こし、ステントを入れて、在宅療養をはじめられました。病気が発覚したと同時に、不動産屋の社長の座を息子さんに引き渡し、仕事をリタイア。 ある日、Fさんは縁側の籐椅子に腰かけ、滝の流れる広い庭園を眺めながら、私に特攻隊時代の話をしてくれました。 「私は特攻隊の生き残りで、一度は死ぬはずだった人間です。多くの仲間が家族への遺書を残して死んでいく中で私は生き残り、仲間の分まで生きようと今まで頑張ってきました。戦友を亡くしたその日から余りの人生を生きていますので、いつ死んでも怖くはないのです。終戦後、闇市からスタートし、不動産屋として今のようなぜいたくな生活ができるように70代までは必死に働いてきました。今や地域では1...