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患者の死と向き合う――在宅が教えてくれたもの

オピニオン 2016年1月27日 (水)  藤澤節子(薬局ルンルンファーマシー代表取締役)

東京・武蔵野市で20年間に渡り在宅医療に携わってきた「薬局ルンルンファーマシー」の藤澤節子先生。この連載では、在宅を通じで出会った患者さんとのエピソードをお話していただきます。さまざまな状況下で死に向き合う患者さんと、最も近い距離で関わる在宅医療。今回は、辛い環境にあっても自分らしさを失わずに生き抜いた女性との出会いをご紹介します。 困難の中にあっても前向きに生きる女性の強さ 私が在宅医療に関わりはじめて間もないころ、Yさんという80代半ばの女性を担当することになりました。心臓病と高血圧の治療を受け、降圧薬と抗血小板薬を服薬するYさんは生活保護を受けており、決して余裕のある生活をしていませんでしたが、色白の肌に深紅の口紅をぬり、大島紬の和服を着こなす、清楚で美しく凛とした雰囲気の漂う女性でした。 Yさんの自宅は小さなアパートの1階にあり、4畳半の寝室には市から提供されたベッドが置いてあります。私が訪れると「いらっしゃい」と外にいる2匹の野良猫とともに出迎えてくれ、寝室まで案内してくれます。そのすっと背筋が伸びた後ろ姿は美しく、いつの間にか私はYさんの魅力に惹かれ、月2回の訪問を心待ちに...