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手術の次に大事なのは「記録」◆Vol.10

スペシャル企画 2016年2月10日 (水)  橋本佳子(m3.com編集長)

――梶谷先生にまつわるエピソードは尽きない。 梶谷先生は、後進に厳しかっただけでなく、自分にも厳しい先生だった。先生は、月、水、金曜日が手術日で、朝から3件くらいやって、終わるのが早くとも午後4時頃。その後に、ご自身が担当された手術は、全て自分で絵を描いて、手術記録を残されていた。摘出したリンパ節の標本なども全て自分で整理されて、冷蔵庫に保管されていた。 とても絵が上手で、先生の記録を見ると、どんな手術をしたのかが、よく分かる。手術記録を残すことは、手術を行う次に大事であることも学び、脇でその作業を見ていると、とても勉強になった。時々、「どうだ、分かったか」とも声をかけてもらうこともあった。先生ががん研病院に着任されたのは1939年。銀座のがん研究病院は戦災で消失したため、戦後間もなく大塚に再建された1947年以降の全ての手術記録が皆、保存されているのだから、これは貴重なデータ。 手術がない火、木、土曜日は回診日。手術後の管理で不十分なところがあると、また鋭く指摘された。回診が終わると、手術予定の患者さんの確認。病棟のナースステーションで、机の上に患者さんのカルテをダーッと並べる。一つ...