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「二村先生、出血が止まりません」◆Vol.12

スペシャル企画 2016年2月12日 (金)  橋本佳子(m3.com編集長)

――卒後6年目の入局。しかも先輩が多い名大第一外科の腫瘍グループ。八千代病院でのアルバイトと並行する日々の中、徐々にその腕が周囲に認知されるようになった。 当時は、国立がんセンターが肝臓がんの手術を開拓していた時期であり、肝臓の右葉切除は大変難しい手術とされていた。ただ、がん研病院時代には、3例くらい立ち会うことができ、肝臓の切除方法は頭に入っていた。肝臓の手術を自分の腕でやってみたいという気持ちがあり、症例にめぐり合ったら、いつでもできるような準備は整えていた。 そんなある時、八千代病院での仕事を終え、夕方でもう大学へ帰ろうかなと思っていたところ、救急車の「ピーポー、ピーポー、ピーポー」というサイレンの音が聞こえた。その音が、なぜか「肝臓、肝臓、肝臓」と聞こえ、偶然医局にいた皆で、「おい、肝臓だぞ、あれ」と冗談を言っていたら、交通事故で肝臓破裂して大出血した患者さんだった。 緊急手術を担当したのは、外科部長。興味はあったけれど、出しゃばってはいけないと思い、医局で勉強をしながら様子を見ていた。確か、夜の9時、10時頃だったかな。手術室から呼びに来た。「二村先生、来てください。肝臓破裂...