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「俺の体を使って、実験しろ」と恩師◆Vol.18

スペシャル企画 2016年2月18日 (木)  橋本佳子(m3.com編集長)

――もう一人、忘れられない患者さんがいる。それは当時、名大の病理学教授として全国的にも有名だった、牛島宥氏の手術だ。 牛島先生は、僕自身が学生時代に習った先生。とても厳しい先生だった。最初に先生を担当したのは、下腿にできた軟部腫瘍(結節性筋膜炎)の手術。数年前に整形外科で手術を受け、再発したので僕が手術をやることになった。「絶対再発しないように取れ」と言われ、うまく治ったので先生の信頼を得るようになった。 数年後、今度は膵臓がんと診断され、また牛島先生から連絡が入った。黄疸がひどく、胆管ドレナージをまずしようと思ったら、「黄疸の何が怖い」「すぐ手術しろ」「俺の体を使って実験しろ」と言われた。黄疸を取ってから手術をするのが、一般的だったけれど、実はそのエビデンスがなかったので、先生の体を使って実験しろ、ということ。それでも、胆管をどのように切除するかを判断することが必要だったので、胆管造影だけはやらせてくださいと言ったらお許しが出た。 手術の当日、牛島先生は本当にとても有名な方で、泣く子も黙るくらいの先生だったから、日本中から病理の先生が手術を見学に来た。けれども、黄疸を取っていなかった...