1. m3.comトップ
  2. 医療維新
  3. 医療ツーリズムの法的リスク

医療ツーリズムの法的リスク

オピニオン 2016年4月1日 (金)  平岡敦(弁護士)

1 はじめに 日本の医療技術水準の高さ,費用対効果,円安の影響などで,外国に住んでいる人が日本で治療や検診を受けるいわゆる「医療ツーリズム」が注目を集めている。しかし,医療ツーリズムによって日本で治療や検診を受けた患者(以下,単に「患者」という。)と医療従事者及び医療法人(以下「医療従事者」という。)の間で,法的紛争が起きた場合の処理については,まだ議論が深化していないようである。医療ツーリズムによる場合,患者は日本の健康保険制度を利用できないケースが多いと思われるので,診療報酬の回収不能事案も,通常より発生リスクが大きい。 そこで,患者から医療過誤であると主張され損害賠償請求を受けるケースと,患者が診療報酬を支払わないので医療従事者から診療報酬支払請求を行うケースを想定して,それらの紛争を民事訴訟で解決しようとした場合に,どこの裁判所を利用することができるのか(管轄の問題)と,どこの国の法律が適用されるのか(準拠法の問題)について,簡単にまとめてみたい。 2 管轄裁判所の決定 (1)管轄裁判所を決めるためのルール 法的紛争をどこの裁判所で裁くのか(管轄)は,重要な問題である。なぜなら...