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「ピロリ教」との仇名にも屈せず◆Vol.19

スペシャル企画 2016年4月19日 (火)  橋本佳子(m3.com編集長)

――1994年から17年弱にわたる教授時代、やはり一番力を入れたのが、ピロリ菌に関する研究。数々の成果を挙げることができたものの、研究初期の段階では、ピロリ菌と胃がんの関係は全く明らかになっていなかった。 1994年に、WHOのがん研究機関(IARC)が、ピロリ菌を胃がんの明らかな発がん物質として認定しました。米国、英国、ハワイという異なる3地域から、無作為研究により、胃がん患者のピロリ菌陽性率は、胃がんでない人よりも有意に高いという研究結果が得られたからです。これらの研究結果はいずれも世界の一流誌に掲載されました。 世界的にはこのIARCの指定によって、ピロリ菌と胃がんの関わりについての研究が盛んになりました。けれども、日本ではこの認定が疫学研究のみによって行われ、基礎研究で証明されていないことなどから、距離を置いて見ている研究者が多数でした。その背景には、胃がんにおけるピロリ菌陽性率のデータが、日本と海外の間で乖離があり、海外の疫学データがそのまま日本には当てはまらないとされた事情もありました。また日本では、胃粘膜内がんを「早期胃がん」として診断し、その発見と治療に力を入れていまし...