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「医師起訴」、左右したのは病理鑑定◆Vol.4

スペシャル企画 2016年5月14日 (土)  橋本佳子(m3.com編集長)

日本臨床医学リスクマネジメント学会の4月3日のシンポジウム「県立大野病院事件を振り返る」で、本病院事件で、弁護側の依頼で胎盤の病理鑑定を行った大阪府立母子保健総合医療センターの中山雅弘氏が登壇、鑑定依頼を受けた際のエピソードや鑑定結果などについて講演した。 大阪府立母子保健総合医療センターの中山雅弘氏 中山氏は、胎盤病理の第一人者。その経験症例数は日本でもトップクラスだ。中山氏は、業務上過失致死罪に問われた産婦人科医の弁護側から病理鑑定の依頼を受けた際、「剥離した胎盤の写真を見て、被告の先生の供述に嘘はなく、お引き受けしようと思った」と明かした。帝王切開手術後に死亡した患者は全前置癒着胎盤で、「産婦人科医がクーパーで胎盤を切開し、大量出血した」ことが検察の起訴事実の一つだったが、胎盤写真には、切開した痕跡は見当たらなかったからだ。 検察の起訴の根拠となった病理鑑定は、福島県のある病理医で、胎盤病理の経験は乏しい。かつ組織切片を顕微鏡で観察したのみで、中山氏が見た胎盤全体を撮影した写真は見ていなかった。「組織所見のみで、癒着胎盤や癒着に伴う大出血を診断できるか」について、「まず不可能だと...